先日いつものようにビジターセンターに出勤すると、
裏口に落ち葉がたくさん落ちていたので掃除をはじめました。
少し腰をかがめて箒で地面を掃いていると、
ウドの大木の幹にカミキリムシがしがみついているのを発見しました。
「この時期に珍しいなぁ」と思いました。
季節は秋真っ盛り、山ふるの気温は夜は一桁台にまで落ち、
だんだんと生きものの気配は感じなくなってくる頃です。
そんな時期にカミキリムシを発見したので、
普段植物好きな私は珍しく近くによって見てみました。
すると少し様子が変です。
ピクリとも動きません。突いても全く動かないのです。
どうしたんだろう?と思いさらに近寄ってみると…。
「 !! 」体の節という節の間から白い菌糸のようなものが出て、
菌にむしばまれ硬直したまま死んでいました。
その時、ふと生きているように死んだ様を見て、
平安時代に弓や刀を刺されても、
後方陣営を守るために薙刀を片手に仁王立ちのまま死んだ、
「武蔵坊弁慶」を思い出しました。
このカミキリムシもきっと夏場の死闘を潜り抜け、
次の世代のための交尾をして、子孫を残し、必死に生きて、
あとは後世にすべてを託し死ぬだけだったのだと思います。
今の季節は秋、これからさらに進んで厳冬の冬へと移り変わっていきます。
今年の自然界の激動を潜り抜けた生きものが、静かに休息を取るころなんですね。
一匹のカミキリムシから自然の厳しさや切なさを感じたひと時でした。
(たっちゃん)