めぐる季節を楽しもう
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花や紅葉、雪、雲の形、生きものたちの姿の変化…。
自然現象や生きものから、私たちは四季の移ろいを感じ取ることが出来ます。
今回から、山のふるさと村で起きる季節の事柄を近年撮影された写真や動画で
紹介する「山ふる四季だよりシリーズ(全4回)」を連載します。
外出しづらい日々が続く中、少しでも季節を感じられたら幸いです。
そして遊びに来ていただけた時の、
散策の楽しみの一つにしてもらえたらと思います。
記念すべき第一回目は、ちょうど今の季節、【冬】 です。
※なお、四季は以下のように分類しています。
【冬】 1月~3月
【春】 4月~6月
【夏】 7月~9月
【秋】 10月~12月
それではお楽しみください。
1月
【雪・氷・霜】
1月は最低気温がマイナスになる日が多く、月に数回、雪が降ります。
意外と積もらない(屋根の雪下ろしはしない程度)のですが、
凍結はするので、水出し(水道管が凍らないように水を出しておくこと)や
スタッドレスタイヤの準備は欠かせません。
【雪の上はフィールドサインの宝庫】
生きものの痕跡のことをフィールドサインと呼びますが、
雪が降ると世界は生きものだらけなんだという事に気付かされます。
またフィールドサインを細かく観察すると、足跡の大きさや歩き方などから
「小さめのシカが、ここで足を滑らせた…?」などと名探偵気分になれます。
【冬はバードウォッチング】
青い羽のルリビタキ(上の写真)は、夏は高い山へ移動し、冬だけ山ふるに
現れます。
一方、ヤマドリ(下の写真)は一年中いるのですが、
冬になると人前にも現れるようになります。
人間からすると野鳥観察にうってつけですが、それだけ冬は食べ物が不足し、
いつもより活動範囲を広げなければいけないということでしょう。
2月
【2月の風物詩 ヤマアカガエル】
まだ真冬の園内に賑やかな笑い声が響きます。
山ふるでメジャーなカエル・ヤマアカガエルは、天敵を避けるなどの理由で
極寒の2月に繁殖行動を行います。
笑い声はオスの求愛の鳴き声。
水面から少しだけ顔を出して、一生懸命鳴きます。
(下の写真では9匹ほど顔を出しています…見つかるかな?)
【冬芽とフジの種まき】
ヒツジやサルに見える不思議な顔の妖精(上の写真)の正体は、
オニグルミの冬芽です。
木は冬の間、冬芽と呼ばれる新芽の蕾のようなものを作って耐えます。
木の種類によって冬芽が全然違うのも面白いところです。一方、冬に種まきをするのはフジ(下の動画)。
空気の乾燥度合いで樹上の実がはじけ、鞘と種があたりに散らばります。
鳥だけではなく、冬はけもの(哺乳類)を観察しやすい季節でもあります。
理由はやはり餌不足で活動範囲が広がっているため。
加えて植物の葉が落ちてフィールドの見通しがよいのも大きいです。
また、けもの側にも「見られてるけどいいや」という雰囲気があります。
3月
【冬の終わりを感じさせる花 ダンコウバイ】
3月でもまだ寒い山の中で春を予感させてくれるのが、ダンコウバイの花です。
近縁種のアブラチャンも同じ時期によく似た可愛らしい花を咲かせるため、
この2種類の黄色い花が、晩冬の色の無い森を一番に飾ってくれます。
【3月の風物詩 ナガレタゴガエル】
ヤマアカガエルに続き、3月に繁殖時期を迎えるのがナガレタゴガエルです。
メスに抱きつくため、オス同士はルール無用の大相撲を行います。
ほぼ完全に水中での闘いとなるので、
私たちは沢をのぞき込むまで気付くことが出来ません。
そのためか1978年に奥多摩の日原で発見されるまで未知のカエルでした。
【冬越しの虫たち】
冬の間、虫たちは成虫・さなぎ・幼虫・卵など様々な姿で寒さを凌ぎます。
3月になると、テントウムシ(左上の写真)やテングチョウ(右上の写真)、
ビロードツリアブ(左下の写真)などが日なたに姿を現すようになります。
右下の写真(※4月の写真です)のように花の蜜を吸うため。
とても小さくてフワフワしているので、早春の妖精とも呼ばれます。
【日なたで食事 ニホンカモシカ】
急な勾配があっても平気なカモシカは、日当たりのよい斜面で食事をします。
もこもこな冬毛がとても暖かそうです。
休憩や反芻(食べたものを口に戻し、もう一度噛む行動)を挟みながら、
日中はお気に入りの斜面でずっともぐもぐタイムです。
ちなみに、気になるものがあると、じーっと見つめる行動をします。
動画内ではキィーッという音が気になったようです。
【ニホンリスの追いかけっこ】
カエルたちに続き、いよいよニホンリスも繁殖期を迎えます。
オスは、ピュ、ピュ、という鳥のような声で鳴きながらメスを追いかけ、
ついでに他のオスを追い払います。
日当たりのいい場所で追いかけっこをしているリスたちを見ると、つい和んで
しまいますが、子孫を残すチャンスを懸けた壮絶な追いかけっこです。
凍てつく冬の1月から暖かな春を予感させる3月までの季節の移ろいは、
お楽しみいただけたでしょうか。
生きものにとって最もつらい冬ですが、それでもしたたかに命をつなぐ姿は
今の私たちに何かを示してくれそうな気がします。
次回の 山ふる四季だより【春】は、来週投稿予定です。
それでは皆様も、山ふるや身近な生きものたちのように冬を乗り越えるべく、
ご自愛ください。
(インタープリター/すみぃ)