2021年2月22日月曜日

山ふる四季だより【夏】

 

めぐる季節を楽しもう

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花や紅葉、雪、雲の形、生きものたちの姿の変化…。
自然現象や生きものから、私たちは四季の移ろいを感じ取ることが出来ます。

山のふるさと村で起きる季節の事柄を近年撮影された写真や動画で紹介する
「山ふる四季だよりシリーズ(全4回)」

外出しづらい日々が続く中、少しでも季節を感じられたら幸いです。
そして遊びに来ていただけた時の、
散策の楽しみの一つにしてもらえたらと思います。

第3回目の今回は、1年の中でちょうど反対側の季節、【夏】 です。

※なお、四季は以下のように分類しています。
【冬】 1月~3月
【春】 4月~6月
【夏】 7月~9月
【秋】 10月~12月

それではお楽しみください。




 月 





【水に満ちた奥多摩湖畔】
梅雨を経てサイグチ沢が増水すると、沢の水が流れ込む奥多摩湖の水位が
6月から7月にかけてぐんぐん高くなっていきます。沢だけでなく、
山全体に染み込んだ水があらゆる場所からこんこんと湧いてきます。
湖際に芽を出していた植物は水中で水草のように流れに揺られ、
集落の人家を支えていた石垣は、再び湖底へと沈んでゆきます。







【水際の魚と鳥】
水位が増すと、少し成長した春生まれの稚魚が湖際で見やすくなります。
まるで水が増えるたびに新しく現れる場所を探検しているようです。
そして活動的になった魚をねらう鳥たちも、湖畔で見かけるようになります。
アオサギ(下から二番目)も、カワセミ(一番下)も、
その長いくちばしで魚を捕まえるタイミングをじっと計っています。







【ネムノキの花とカラスアゲハ】
毎年7月にピンク色の線香花火のような不思議な花を咲かせるネムノキ。
見た目通りフワフワな触り心地で、落ちているとつい拾ってしまいます。
メタリックな光沢の青い翅を持つカラスアゲハは、このネムノキの花の蜜が
好きなようで、1本の木に何匹も集まる風景が見られます。





【待ってました!セミの羽化】
個人的に夏らしさを感じる生きものの代表、セミ。
夏の山ふるには、ニイニイゼミ、ヒグラシ、ミンミンゼミ、アブラゼミ、
ツクツクボウシ、チッチゼミと6種類ものセミがあらわれ、大合唱します。
7月下旬に梅雨明けすると、いよいよセミの羽化シーズンがはじまります。



 月 



【雲が湧き立つ午後】
8月の昼過ぎから夕方にかけては、毎日のように大気が不安定になります。
入道雲が上空にかかったかと思うと、激しい雷雨になることもしばしば。
時には雨ではなく、あられが降ってくることも。
しかしほとんどの場合は30分程度で何事もなかったかのように終わります。




【夏は昆虫ウォッチング】
カブトムシやクワガタムシ、オニヤンマをはじめ、
美しい模様のスミナガシ(右上)や擬態上手なナナフシモドキ(右真ん中)、
水玉模様と触覚のモフモフがかわいいルリボシカミキリ(左下)など、
夏は見ごたえのある昆虫たちが勢ぞろい。
園内の生きものは持ち帰り禁止のため、ぜひ現地の生息環境を含めてじっくり
観察してみてください。




【夜行性の動物 ムササビ】
防寒具が少なくて済む夏の夜は、ナイトウォーキングにもうってつけ。
そして夜の散策中に出会うことのある野生動物の一種がムササビです。
一番活動的なのは繁殖期の冬ですが、夏は成長した子どもと親が連れ立って
食事をしていることが多く、賑やかな印象です。しかし、日中暑すぎると、
巣穴から上半身をだらんと外に出して風を浴びている時があります。
秋冬は暖かそうな毛皮も、夏は脱げなくて大変そうだなと思います。




【チッチゼミの鳴き声】
元気な鳴き声のミンミンゼミやアブラゼミに比べ、控えめな声のチッチゼミ。
名前の通り、ヂッヂッヂッヂッヂッ・・・と一定のテンポで鳴き続けます。
マツ林に生きるチッチゼミは、東京では少し珍しい種類のセミで、
山ふるでも、自然散策路のネイチャートレイルⅠや湖畔の小道といった
マツの生えている場所で鳴いています(動画は湖畔の小道)。



 月 



【雨の日はしずくウォッチング】
山ふるにお出かけの日に雨が降ったら、レインコートや雨傘、長靴で
雨の日にしか見られない景色を探しに行きましょう。
草が成長した9月には、梅雨の時期とはまた違う醍醐味があります。
しゃがんでみたり、斜面を下から覗いてみたりすると、雨のしずくが作る
幻想的なワンシーンに出会うことが出来ます。





【キノコと冬虫夏草】
雨の日は足元の観察に気が抜けません。
これから最盛期を迎えるキノコたち、その中でもとりわけ不思議なキノコが
とても小さくて、しかもあっという間に消えてしまう冬虫夏草です。
カメムシのなかまから栄養をもらって生えてくるのが
冬虫夏草の一種、カメムシタケ(下)。線香花火のような小さなキノコで、
生えてから数日で色が無くなり見つけにくくなってしまいます。






【芸術的なトゲグモの巣】
クモの巣はどれも芸術的ですが、9月に特に見かけるようになる巣は、
指先ほどしかない、小さな金平糖のような形のトゲグモが作ったもの。
森の中、光が当たってきらめいている様子は本当にきれいです。
小さなトゲグモが一生懸命手編みした巣だと思うと余計に感極まります。





【フジアザミの花】
9月に咲き始める湖畔のフジアザミ。
石がたくさんある河原や登山道脇などが好きな変わった草本です。
アザミとしては日本最大のフサフサな花にはたくさん蜜があるようで、
蜜が好きなホウジャクのなかま(左)やハナバチ(右)などが訪れます。






【国指定無形民俗文化財 小河内の鹿島踊】
毎年9月、奥多摩湖の対岸にある小河内神社に奉納される小河内の鹿島踊は、
もともとは山ふるが建っている土地から湖にかけての日指(ひさし)集落、
岫沢(くきさわ)集落、南(みなみ)集落に伝わる郷土芸能でした。
写真は山ふるで11月に上演された際、撮影したものです。
園内の旧加茂神社の神様がお引越しした先である小河内神社にて、
鹿島踊保存会の尽力によって今も奉納が続けられています。



水と生きものに満ちた7月から9月までの季節の移ろいは、
お楽しみいただけたでしょうか。
春に土の中や水の底で出番を待っていた生きものが主役になる夏本番。
命溢れる季節ですが、暑すぎても困るのは人も生きものも同じようです。

次回の 山ふる四季だより【秋】は、来週投稿予定です。

それでは皆様も、ちょうど半年後の夏を元気に楽しむことが出来るよう、
どうぞご自愛ください。


(インタープリター/すみぃ)